2011年9月9日金曜日

一の章 木材と塗装 木材を生かすのか売るのか

一の章 木材と塗装
木材の長所として「あたたかみ」「触りやすい」「安全安心感」のような人類共通の認識がある。しかし、物質、物体的には往々にしてコンクリート、金属、化学合成物質とは異質の植物でありながらそれらと同様、構造物、構築物の基材と活用されることが大半である。そこに無理な問題が生じる。そもそもコンクリートも金属も化学合成物質も人工加工物質である。対して木材は自然の育みによるもので、表題のように売るという人間のエゴを加えると無理難題を醸しだす。平成23年6月29日国土交通省より不燃木材に関する調査結果が発表され、10件中9件が必要性能なしと次の通り発表された。

木材の欠点は燃えやすいとされているが、引火点は240℃以上であり、そもそも構造、構築物の用途には厚み巾などが数㎝数十㎝ある。燃えるカンナクズのようなものも同一視している傾向にある。火災という事件に対し、先ほど示した構造、構築物がいきなり発火することはない。それらに着火する以前に紙や布、化学合成物質が発火して類焼することが大半である。
なぜ、国交省発表のような問題が起こるか。表に示されている薬剤が使われると木材表層部はそれらの薬剤化学反応により湿気を呼ぶと同時に白華現象をもたらす。湿気は塗料を剥離させる作用をすることは言うまでもない。塗装の安定化、コスト低下の為、必要量の薬剤を使用しなかった。まさしく売るためではなかろうか。売らんが為の問題と思われるものは防炎剤だけでなく、防腐剤にもある。一定の基準量を注入すれば手にとって見てもその重量感で防腐剤が充分入っているかが判断できる。防蟻薬剤もまた薬剤という意味ではかつては5年間以上の効果をもたらす量の塗布をしていたが、近年は5年間の効果しかもたらさない防蟻薬剤が建築防蟻として活用されている。理由はそれ以上強い防蟻薬剤は人畜に害をもたらすというのだ。これもまた納得しかねる基準で人畜の体重や体質によって異なるはずである。

木材改質
鉱物化とは言っても木材本来の特性である。
・呼吸をする
・柔軟性がある
・保湿性に優れる
・加工性に優れる
・植物性である
特性を生かし、条件を封鎖する、木材改質をする、その方法は、

低温乾燥
木材内部の含水率を40℃の潜熱乾燥法により、15%程度に下げる。
この潜熱乾燥法を施すことで割れ、曲がり、反りなどを防止する。
コロイドガラス注入
低温乾燥木材にコロイド状の液体ガラスを立方米当り70kg程度注入し、木材内部に微粒子のガラス不連続膜を形成させる。
そのことにより木材の呼吸は止めないで水の浸入を阻止出来る。
また、不連続膜ゆえ木の柔軟性をそぐこともない。

加工性能
微粒子の不連続膜状コロイドガラスは木を切る、削る、穴をあけるなどの阻害をもたらさない。木本来の質の変化をもたらさない
曲げ強度、引っ張り強度、圧縮強度に変化はなく剪断強度を少し高める。以上の結果のように木材の改質を行うことで次のような特性を得られる。

人肌木肌「銘木調白木」
「脂がのる」という表現があるが人肌が若々しく精力に満ち満ちた時のように木肌もまた美しい表情を表わす。一般的に「銘木」と呼ばれる木は長期間の陰干という手法を用いる。
理由は可視光線を避けて自然乾燥をする必要がある。人肌の日焼けは紫外線によるものと思われがちだが、人の肌の奥深くの日焼けをもたらすのは可視光線すなわち人の目に見える光である。真夏の太陽は紫外線が強く、人肌を焦すがそれはあくまでも表面で春先の可視光が強い時季には人肌を深く焦すように木肌もまた可視光が木の内部を焦す。
木材内部にコロイドガラスを注入し、可視光焼けを防止し、木材表面を無機塗装(白木調)にすることでいわゆる銘木調(脂ののった木肌)となる。

「浮造り
通常「浮造り」とはいかにも歴史が刻まれたがごとく見せる木材加工方法のことで、新しい木材の冬目を残し、夏目をカンナ掛けで削り取る手法をいう。本物の百年も経った古木は自然に浮造りになっているが、一般的には長い年月の煤がつき真黒の表面だけでなく内部にも侵入しており、洗っても落ちない薬品を用いると肝心要の木肌をだいなしにしてしまう。侵入した煤が木肌を傷めることなく洗い出せる剤を「古美木」という。

不燃木材用塗料
・無機質のナノ化加工塗料
・塗るだけで内部に浸透させる塗料
・水に溶けにくい塗料
・紫外線、可視光線劣化しにくい塗料
・燃えにくい塗料
木用塗料
塗料そのものが化学合成物質である。塗装の目的は基材そのもののデコレートと防食である。
その意味では我々の目にふれる物質のほとんどは染色または塗装されているが、塗装にしぼり込むとその基材は金属、鉱物、化学合成物質と木材であり、通常木材以外は1~3回の塗布であるが、木材は8~100回の塗装を必要とする。では、現実に木材構造、構築物にそのような重ね塗りが行われるか、否である。しかも呼吸性能を防いだり、木の動きに追随したり、可視光線劣化を起こさなくする。他に木材内に浸透し絡むなどの木材独特の相性が必要である。平たくいうなら木材のような天然自然のものと化学合成物質の人に物との相性は鉱物、金属のように人意的強制は難しいと言う。ましては、自然現象も太陽、空気、水は天然自然物には不可欠で人に強制加工は自然の摂理である新陳代謝とは合い入れず、それらの逆境にはまる。つまり人工的力でネジふせをするのでなく、それらに合わせて個性に応じた物づくりこそ「生かす」ではないか。 すなわち改質木材、改質塗料こそ基材に合わせる技術であり、職人である。

1 件のコメント:

  1. この技術を、ぜひ新国立競技場建設にぜひ活用して欲しいものです。

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